リターンとリスク
アセットアロケーション(資産配分)を組むとき、それぞれの資産について、どれくらいの年利が期待できて、どれくらいの振れ幅になるのか、が知りたくなります。そこで、日本株式や、先進国債券、などのイメージデータを使って、期待できる年利(リターン)と、その振れ幅(リスク)を試算してみました。
- 毎年の年利の相乗平均が『年率平均リターン』
- 毎年の年利の振れ幅が『リスク(標準偏差)』
- リターンやリスクの数字を見るときは、いつから何年間のデータで算出したか確認すること
最初に、基準価額のイメージデータです。日本株式、先進国株式、日本債券、先進国債券、の2002年から2018年までの基準価額イメージをグラフで示します。
基準価額のイメージデータから、毎年の年利がどうなっていたかを計算して棒グラフで示します。
まずは、日本株式の年利データのグラフです。
毎年の年利の平均を計算すると+5.9%になりました。グラフに青い線で示します。
投資信託関連のWEBサイトなどで『リターン』という言葉が出てきますが、この毎年の年利の平均が『年率平均リターン』です。注意が必要なのは、リターンの算出にどの年のデータを使っているか、です。例えば、5年間の平均で算出するとして、2013年から2017年の5年間の平均は大きなプラスになりますが、2007年から2011年の5年間の平均は大きなマイナスになります。
次に、毎年の年利の振れ幅を数値化するために「標準偏差」を計算すると23.5%になりました。グラフで、平均値の青い線(+5.9%)を中心に、+23.5%、及び、-23.5%、したのが緑色の線(+1σと-1σ)です。投資信託関連のWEBサイトなどで出てくる『リスク』という言葉が、この「標準偏差」のことです。リターンと同様に、リスクについても、どの年のデータを使っているかは注意して確認する必要があります。
統計学的には、年利の振れ幅が正規分布になると仮定すると、ある年の年利が+1σと-1σの間になる確率が68.27%と考えられます。ざっくりと言うと、3の年のうち2年は、年利が+1σと-1σの間になるということです。逆に言うと、3年に1回は(プラスかマイナスかは別にして)+1σと-1σの外側まで振れると考えられます。
さらに、平均値の青い線(+5.9%)を中心に、標準偏差23.5%×2、すなわち47.0%の振れ幅が赤い線(+2σとー2σ)です。統計学的には、年利の振れ幅が正規分布になると仮定すると、ある年の年利が+2σと-2σの間になる確率が95.45%と考えられます。これは、22年に1回くらいは、(プラスかマイナスかは別にして)+2σと-2σの外側まで振れるということです。つみたてNISAの最長期間は20年ですから、20年間フルに積み立てを続けるとしたら、どこかで(プラスかマイナスかは別にして)+2σと-2σの外側まで振れると考えたほうがよさそうです。
続いて、日本債券のグラフです。縦軸の数字に注目してください。日本株式がリターン(年利平均)5.9%、リスク(標準偏差)23.5%だったのに対して、日本債券のリターン(年利平均)は1.2%しかありませんが、リスク(標準偏差)も1.3%と小さく、非常に安定していることがわかります。
次に、先進国株式です。今回の四つの資産で、唯一、先進国株式だけが、-2σを大きく下回った年があります。2008年のリーマンショックです。リターン(平均年利)が7.7%と一番高いのですが、一番マイナスに触れたのも先進国株式です。
最後に、先進国債券です。日本債券ほどではないですが、株式に比べるとグッと安定していることがわかります。
このように、リターン(年利平均)が高い資産はリスク(標準偏差)も大きいため、年ごとの振れ幅が大きいことがわかります。
いろいろな資産を組み合わせることで、目指すリターン(年利平均)を、できるだけ小さいリスク(標準偏差=振れ幅)で構成したいものです。